亭主の独り言
角田庄右衛門さんを偲んで  vol.17



  私は國學院大学文学部神道学科卒業後、和歌山市の日前宮で4年修業、その後地元の大山阿夫利神社の神主をしておりました。
一生「晴耕雨読」の人生を送るつもりでし た。

 34才の時、伊勢原青年会議所理事長として神奈川の会議に出向きました。
当時、横 浜青年会議所からは岡田屋モアーズの岡田さん、崎陽軒の野並さんなどそうそうたる 方々の中で逗子葉山青年会議所理事長の日影茶屋社長の角田庄右衛門は他に抜 きん出ていました。
人なつこくて、厳しく、優しい人柄に引かれました。私とは一つ違いです。
 



(横浜あいちやで食事中、 左から 芽生会事務局長「大石氏」 「角田氏」 夢心亭「相原」 太田縄のれん「青井氏」)

 私も頑張れば、角田さんに少し近づけるかも知れない。俺も男だ、と一大決心をして 女房を説得して阿夫利神社を退職しました。旅館業の弟に料理を教えてもらい、下の子供を背におぶりながら、料理屋業になりました。懐石「松鈴庵」は女房と2人の料 理屋でした。
バブルの時でしたから商売は順調で二軒目の豆腐料理「夢心亭、大山現代の美術 館」を開くことが出来ました。
 
 角田さんは日本青年会議所でも出世街道まっしぐらでした。
 フードサービス部会長になられ、私も「入りなよ」と誘って頂き、京都会議の食事例会に参加しました。
二百人近い例会場で私に気がつくと「僕のテーブルに一緒に座ろ うよ」と言われました。
一緒になった神戸で和食の名店を展開されている西村さん、 横浜中華街の会長の林さん。勉強になりました。
こんなちっぽけな私にいつも細かい 配慮で接してくれました。角田さんはいつも優しいんです。その優しさを思い出すと 今でも涙が止まりません。奥さんのマリークリスチーナさんと一緒に京都の夜、遅くま で飲み回ったのも楽しい思い出です。

  角田さんが青年会議所の高知で開催された全国大会の実行委員長の時、私は日本青年 会議所副委員長で交通問題をテーマにトヨタ自動車と組みコンペにエントリーしまし た。最優秀賞を貰いました。これも角田さんの後押しのお蔭でした。

  私は40才で青年会議所を卒業し、しばらくして電話を頂きました。芽生会へのお誘い でした。日本を代表する日本料理屋700社の組織です。角田さんは全国理事長を務め、日本料理会の重鎮になられてました。
「私みたいに小さな店で通用しますか?」と言いましたが、「うん相原さんは、小さ いけどいい店やってるよ。大丈夫です。」と言って貰ったときは、嬉しかったです。

  角田さんの50才の誕生日パーティーが姉妹店「ラ・マーレ」で開かれ、しばらくして 私は脳動脈瘤を発症し入院、息子が心配して大学進学を諦め、修行先を探すことにな りました。
角田さんに相談しました。「うちの店で預かるよ」。出来の悪い息子で迷惑掛けまし た。

 昨年になって角田さんは例会に来られなくなりました。
「角田さんが来ないとつまら ないですよ。来てください。」
「分かった。今度出るよ」。
 でも、もう体調は悪かったんですね。4月、日影茶屋での例会の案内を貰い、嬉し かったです。

 しかし、その直前の4月の18日、私は脳梗塞で倒れてしまいました。

 退院後、9月になってシャバにさよならしなければならないと思い角田さんに電話し ました。「もう人生終わりですよ。」大袈裟に言いましたら、「俺も同じだよ。またい つか会おうよ。」私にはその理由は分かりませんでしたが肝臓の具合が良くないとは 聞いていました。普段は酒も飲まず、タバコも吸わない人でした。

 12月の某日、芽生会に関係される方とメールのやりとりしていた時、「角田さんに何か有りましたか?気になる情報が有るんです。」と言われました。
 私は驚き、とにかく横浜牛鍋「大田なわのれん」の青井会長に電話して事実を確認し ました。

61歳で逝去。
 
 密葬の日、寺に電話をして場所の確認ましたが「親族だけですのでご遠慮下さい」と 言われても我慢できず息子の車で向かいました。
すごい人だかりの一画に芽生会のメ ンバーがいます。女性の事務局員は泣いています。皆、泣きたいのです。でも男は我慢してました。
義兄の元スターバックスジャパン社長がいらして「娘の結婚 式を無事済ませて、安心して逝ったんだな」。
 仲間は皆、遺体に最後の別れをしようと行きま したが。私は元気な角田さんの思いでだけでいいと帰りました。
  
 私にとって角田さんの死はただの悲しみだけでなく、角田さん生き方を見ながらの20年が消滅してしまったようなものです。 私は思い出す度に涙を流しています。
  
  今年12月、早めな初雪が降りました。その雪を見ながらまた込み上げるものがありま した。


相原秀樹亭主・館長 相原秀樹

私儀恐縮ですが、私は一見難しい人間に見られがちですが、実は全然違います。
おしゃ
べり大好きなのでお客様に嫌われないように静かにしています。
人間大好きです。なんでも結構です。お声をかけてください。


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