亭主の独り言(2)    「正座」

 

 私は23歳の時、和歌山で修業をしていました。週一回の休みにはお寺を回ることにしていました。
ある日、和歌山市内で禅宗の寺の門前に「参加自由の勉強会」と張り紙がありました。
yamada.roushi.受付の方に「どうぞお入りください」と案内された場所が大広間の最前列。時間がきて百人ほどの
人で一杯になりました。 花園大学学長「山田無文老師」が静々と進まれます。若い僧が小さな鐘を
鳴らしながら従います。
 
 山田無文老師は明治以降,稀代の名僧と云われました。話術も素晴らしく、最初は聞き取りにくい
小さな声で話され、聴衆は耳をそばだてて、しんとして緊張感が走ります。老師の声はだんだん
高まります。会場は一体となり、感動の波です。
 
 難しい禅問答が優しく解き明かされます。が、私は焦ってきました。正座が苦手なのです。老師
は皆と同じ畳に足を組み優しい目で話しかけます。私の目の前です。私の後ろには百人の身じろぎ
もしない人たち。今の歳になれば足を崩したでしょう。が、23歳の私には出来ませんでした。足の
痛いのを通り越して感覚が無くなります。冷や汗が出てきてもじもじ。話を理解する余裕もなくな
ってきました。ほぼ2時間が過ぎ閉会しました。

 すごい人に出会ってしまったなぁという感動と「正座が出来なきゃぁだめだぁ」という反省。

 わたしの仕事上、茶道の勉強をしなければなりません。懐石料理とはお茶の正式なセレモニー
「お茶事」の中で出される料理のことを言います。お茶事の進行を見ながら調理と盛り付けをします。
お茶とは何かを理解し、はじめて懐石料理が出せるようになります。茶道教室では長時間正座をしな
ければなりません。 

 昨年、あるお茶の会が出来ました。それは「男だけのお茶の会」。先生は女性ですがメンバーは男
だけ。お手前の勉強会ではなく、お茶を飲む事を楽しむ会です。先生の手作りの懐石料理や日本酒が
出ることもあります。ある会員が「懐石にワインを使うことは可能ですか?」とお聞きしたら、「そ
れでは次回はワインを飲みながらお茶を楽しむ会を開きましょう」ということになりました。この会
が何よりも魅力的なのは正坐をしなくてもよいということです。

 私は昨年の11月に水泳を始めました。カナズチの私が半年でクロールや背泳ぎが出来るようになり
ました。周りの人たちが「すごいね、もう中級にいけるよ」と言いますが、コーチが「相原さんはま
だ駄目です。バタ足が上手に出来てないもの」「じゃあバタ足が上手になる為にはどうすればいいん
ですか?」「家で毎日正座をして、できればお尻を畳につける女座りで生活ができれば一番ですよ。
そうすれば足の甲が真っすぐになってバタ足が上手になりますよ」と言われました。

 また、正座で頑張らなければなりません。


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